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なんとなく思いついてなんとなく書きました。
熟年夫婦的な安定感のあるゼロしいが書きたかったらしいよ!
短いですが、興味のある方は続きからどうぞ。

 

…と、その前に通販関係のご連絡を。
本日(8/26)までに頂いているメールには全て返信済みです。
万が一不着の場合はご連絡下さるようお願い致します。

そして虫の音と君の息遣いを聴く

「ねえゼロス」
 薄暗い闇の中、隣で寝ているはずの男に呼びかけた。多分、まだ眠ってはいないだろうと思ったからだが、返事がないようならそれはそれで別によかった。
「んー? なによ」
 案の定、まだ起きていたらしい男の答えが返る。それでも多少は眠りに向かいつつあったのか、その声は普段聞くものよりごく僅かにだが柔らかい。その事実に何故か少し安堵して、聞こえないようにそっと苦笑した。
「なんでもない」
「え、何よソレ。呼んどいて何もないとかどーゆーことよ?」
「だからなんでもないんだってば」
 ちょっと呼びたくなったから呼んだだけ。ただそれだけだ。らしくないのは承知している。それでも呼びたくなったんだから、もうそれは仕方ないじゃないか。
「……ちぇ」
 あからさまに不満そうな舌打ちに、今度は聞こえるように小さく笑った。
「そーんな可愛いコトしといてさー、おさわり禁止とかどんな拷問だっつーの」
 ガードが堅すぎるだのなんだのと、ぶつぶつと零すのがとても可笑しい。でも確かにこいつとあたしが、ただ枕を並べて隣同士で、何事もなくおやすみなさいなんてのは似合わなくてもっと可笑しいのかもしれない。かもしれないが、しかし、だ。
「仕方ないだろ、ここはミズホなんだから。同じ部屋で寝られるだけでありがたいと思いな」
 そう、それだって破格の譲歩なのだ。どうあってもそこは我慢してもらわねばならない。
 ――あたしだってそっちに行きたいんだよ。
 胸の内でなぞる本音は言わずにおいた。そんなことを言ったが最後、調子に乗ったこいつが何をしでかすかは嫌というほどにわかりきっていたから。
「おやすみ」
 だから代わりに、その思いだけを乗せた一言を贈る。
「……ん。おやすみ」
 同じ響きの籠もった返事を、聞きながら静かに目を閉じた。

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