- 2011/04/2323:54
- カテゴリー: 日常, TEXT, TOG-リチャソフィ
スパコミがもう来週だなんてそんなことは(以下略
あ、前にも書いたけどゼロしい本は多分出ません…。期待した人はいないと思うけど申し訳ない。
代わり…にはなりませんが、ペーパーに季節モノな小話一本載せてるはずです。大していちゃいちゃしてないかもだけど、無料なのでどうぞお持ち下さいませー。
スパコミ当日の頒布物やらに関しては、後ほど別記事でちゃんと御案内出します。今度は前日深夜とかにやらないでもっと早く出します…。前回の教訓を活かそう(目標)
追記には書いたはいいけど分類に困ったお話を突っ込んでみる。
アスシェリ夫婦がリチャソフィについて喋ってるだけのよくわからん話です。
その日、アスベルはずっと不機嫌だった。
正確にはその日の朝一番の便で、王都からの手紙が届いてから。
「もう……アスベルったら、なんでそんな怖い顔してるのよ」
三時の休憩にと、テーブルにお茶のカップを並べながら問う。しかし言われたアスベルは、別に、と仏頂面で答えてわざとらしく大きな溜息をついた。
「一体どうしたっていうの? 陛下からのお手紙に、嫌なことでも書いてあったの?」
「……そんなんじゃないさ。あいつがそんなこと書いてくるわけない。いつも通りの近況報告だよ」
明らかに面白くなさそうに言うけれど、その内容に疑いはなかった。だってあの二人の仲の良さは折り紙つきで、たとえよほどの大喧嘩をしたとしても――まあ、まずそんなこと自体想像がつかないけれど――あの陛下が、殊更彼を怒らせるような手紙を寄越すとは思えない。
「じゃあ、なんでそんなに機嫌が悪いのよ」
怒っている、というよりはむしろ拗ねているのだろうか。どうにも子供じみた膨れっ面に、苦笑を堪えつつ穏やかに訊く。無責任につついてみたら楽しそうだけれど、それでもっと機嫌を損ねられたら後で面倒なことになるのはわかりきっていた。長年の片思いを実らせて晴れて夫婦となった彼は、これでなかなか頑固者なのだ。
「……ソフィが」
「ソフィがどうかしたの?」
「ソフィにも、手紙が来てたんだよ。リチャードから」
「そうね、そう言ってたわね」
つい数時間前の昼食の席で、彼女は手紙の内容をあれこれと詳しく話していた。先日の手紙と一緒に送った押し花を、陛下がとても喜んでくれたこと。珍しい花の種を手に入れたから、近日中に送ってくれるらしいこと。今年も沢山咲いたクロソフィの風花化を、今度こそ見に行きたいと言ってくれていること。どの話も楽しそうに、明るく弾み揺れた声で止め処なく。
「……最近のソフィは、リチャードからの手紙が来るといつもあいつの話ばっかりだ」
さも重大な、由々しき事態ででもあるかのように。重々しく吐き出すように言った彼は、半眼で壁の模様をじっと見つめている。
「……ふふっ」
つい、堪りかねて吹き出してしまった。途端にアスベルの不機嫌そうな目が向けられたけれど、怖いとは全く思わない。ただあんまり笑ってしまうのも可哀想だから、必死に込み上げる笑いを引っ込めた。なかなか難しい作業だったけれど、どうにか努力して表情を繕う。
「それにそもそも、あいつの手紙! 俺宛のと全然厚みが違った!」
「そ、そうかしら……? アスベルの気のせいじゃない?」
「いいや、そんなことない。どう見ても倍はあったぞ、ソフィにだけそんなに沢山書くなんて……」
一端そこで言葉を切り、むう、と押し黙る彼にまた笑いそうになる。
「アスベルには少ないのにずるい、って?」
「なっ、別にそういうわけじゃ……ない……けど!」
茶化すように言うと案の定、ちょっと焦り気味に動揺する。ほんとにわかりやすいんだからと密かに嘆息し、さて本心はどっちだろうと考える。多分どちらも偽らざる本音ではあるのだろう。でもその中心を占めるのは、友達をとられた悔しさか、それとも愛娘の歓心の行く末か。
「だ、大体ソフィはこの頃バロニアに行きすぎだろ。あいつだって忙しいんだから、そう度々訪ねちゃ迷惑だろう」
「あら、陛下にも息抜きは必要よ。滅多にお城を出られないご身分なんだから、それくらいいいじゃない」
「それは、でも、そうだけど……」
どうやら、主軸となっているのは後者だったらしい。今も昔も、びっくりするくらいの鈍感ぶりは健在なのに、こういうところは変に鋭いのね。父親ってすごい、と言うべきなのかしら。
「ソフィだって楽しんでいるみたいだから問題ないでしょう」
それとも貴方には問題があるの?
言いながら、笑うのを堪えて椅子に掛ける。お茶の用意が調ったテーブルを示し、休憩にしましょうと呼びかけた。やってきた彼は向かいに座り、相変わらず渋い顔でカップを取り上げる。
――何もわかってない、わけではないようだけど。いつになったら気づくのかしらね?
私も同様にカップを手に取り、甘い香りのする紅茶を一口啜る。まだ冷めてもない紅茶は一気飲みするものではないし勿論その気もない、けれどすぐにはカップを置けなかった。だってこうやって隠していないと、緩む口元を見られてしまうから。