likeではない恋をしました
「ねえリチャード、わたしのこと好き?」
ちらちらと横目で様子を窺いながら、何気ない態度を装って訊く。二人掛けのソファの隣に腰かけて、手にした書類に目を通していたリチャードがこちらを向いた。突然の問いに一瞬驚いたようだったけれど、すぐに目を細めて柔らかく笑ってくれる。
「勿論、好きだよ」
綺麗な笑顔。穏やかで、とても優しくて、胸の奥がぽっと温かくなる。それが他の誰でもないわたしに向けられているのが何より嬉しい。
「……ほんとに好き?」
疑っているわけじゃない。でも確かめるようにまた訊いた。
――それはどういう好きなのかな。友達として好き、なのかな。
わたしだって勿論リチャードが大好きだ。友情の誓いを交わしたあの日から、ずっと変わらない大事な友達。でも今はそれだけではないことを、ほんの少し前に気づいてしまった。
『シェリア、わたしおかしいの。リチャードといるとすごくどきどきして、顔が熱くなってなんだか苦しいの』
まっすぐに顔が見られない。目を合わせてお喋りするのが辛い。楽しいのに上手く笑えない。一体どうしてしまったんだろう、もしかして何かの病気なのかな。
そう言って殆ど泣きそうになりながら、途方に暮れて悩みを打ち明けた。それを聞いたシェリアは澄んだ琥珀色の目をまんまるにして、それからくすくすと笑い出して。
『大丈夫よソフィ、それは病気じゃないわ。それはね――』
探るような視線を送られて、リチャードはぱちぱちと目を瞬いた。そして小さく首を傾げて、またふわりと綺麗な微笑みが浮かぶ。
「本当に、大好きだよ」
深みのある茶の双眸に、射貫かれると何もかも見透かされているような気がする。でももしもそうなのだとしたら、ねえ、本当にその言葉を、
「……本気にしてもいい?」
嘘だなんて貴方はきっと言わない。わかっていても不安になる。
そうして永遠のような一瞬の後、頷いたリチャードの胸に飛び込んだ。優しく抱き止めてくれた腕のぬくもりが、泣きたいほど温かくてただ嬉しかった。
- 2011/06/11